モンスターボール。
 あの世界では基本的にどこでも手に入れることができ、しかも安い。
 そのくせ、あんなにも高性能の製品である。
 少し考えてみよう。
 あんな物が、あんな値段で販売されて大丈夫なのだろうか?
 どうやったら、あんなに安く売れるのか?
 考えられる理由として、「品質維持をしていない」可能性がある。
 本来、どのような工業製品も厳しいチェックを受けて販売されるものだ。
 しかし、チェックで弾かれる製品が多くなると、売れる分が減る。
 その結果、高くなってしまうわけだ。
 逆に、チェックしなければ作った分だけ売ることができ、安く売れることになる。
 ゲームの話に現実的に突っ込みいれてどうするんだ、というのはさておき、今回の話はもしモンスターボールが本当にそんな乱暴な販売をしていたら? という勝手な想定で書いていくとする。

 ある家の庭。
 父と息子が、バトルをしている。
 息子は10代後半、という所だろうか。
 天気は良く、二人とも半袖姿であった。
 父のはグレイシア♂。
 息子のはガブリアス♀。
 お互いが睨み合っている。
「ガブリアス、ドラゴンダイブだ!」
 息子の指示で、ガブリアスが大きくジャンプしてグレイシアに跳びかかる。
「避けろ! グレイシア!」
 が、グレイシアは父親の命令に従いそれをなんなくかわした。
 ドラゴンダイブをかわされたガブリアス。
 彼女はそのまま地面にぶつかってしまう。
 しかも運悪く、彼女の膝の棘が地面に刺さってしまう。
 すぐに起きることが出来ず、もがくガブリアス。
「今だ! れいとうビーム!」
 グレイシアがそんなガブリアスにれいとうビームを撃った。
 避けられるはずもなく、ガブリアスはそれをもろに食らう。
 威力四倍、ガブリアスはその一撃でダウンしてしまうのであった。
「よーし、父さんの勝ちだな」
 父親が嬉しそうに笑い、グレイシアをボールに戻した。
「ちぇー、結構頑張って育てたのにな」
 息子が悔しがりつつボールのボタンを押す。
 だがしかし、ボールは開かない。
「あれっ?」
 何度もボタンを押すものの、何故かボールは動かない。
「それにしても、立派だなあ。ホントよく育てたよ」
 父親がダウンしているガブリアスの横にしゃがみこみ、そっと頭を撫で始めた。
「あ・け・よ!」
 息子がイライラし、思い切りボタンを押した。
 パカリとボールが開き、回収光線が出る。
 光線が、ガブリアスを包む。
 そして、ガブリアスを撫でていた父親まで光線に包まれてしまった。
「えっ」
 父親が小さい声を上げた途端、ガブリアスと共にボールに吸い込まれてしまう。
「ああっ!?」
 息子も驚くが、動作を取り消すことも出来ずそれを見ているしか出来なかった。
 ガブリアスと父親を吸い込んだボールは、突然激しく振動し始める。
「わっ、わっ……」
 動揺している息子の手からボールが転げ落ち、振動に任せて転げまわる。
 そして数十秒後。
 ボールはようやく振動を止め、ピタリと転がるのを止めた。
「父さん、大丈夫かな……?」
 息子がボールを拾い上げ、恐る恐るボタンを押した。
 すると先ほどの不調が嘘だったかのように、ボールは一発で開く。
 そして中から父親とガブリアスが……
 融合してしまった存在が出てきた。
「……!?」
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絵:愛鋼熊
 服装は父親のものであるが、融合して体が大きくなったせいかズボンのチャックは壊れて開いている。
 ベルトでかろうじて止まっているズボンの中からは、父親愛用のブリーフが。
 もっこりしてないのは、ガブリアスの体に合わせてスリットに逸物が収納されているからだろうか。
 靴も先端がガブリアスの爪に破かれている。
 お腹もぽっこりと丸々としており、シャツも引き伸ばされていた。
 父親の髪と目があるが、頭部は基本的にガブリアス。
 きつい顔つきで無くなったせいで、鼻先の星が可愛らしく見えてしまっていた。
 そう、壊れたボールが見境なく生き物を吸い込み、中で一つにしてしまったのだ!
「父さん……?」
「……! ……!」
 融合体パパリアスが何か言おうとしているが、上手く話せないようだ。
 完全にガブリアスの爪になってしまっている指で、息子に掴みかかってきた。
「わ、やめてよ……!」
 そう言われると、パパリアスはパッと手を離す。
 だが、その顔には驚きがにじみ出ていた。
「ひょっとして……おすわり!」
 それを見て何かに気づいたのか、息子がパパリアスに命令する。
 命令されたパパリアスは、さっとお座りをする。
 しかし、落ち着かない顔でキョロキョロと自分の体を見ている。
「ああ、そうか! 父さんは僕のガブリアスとくっついたから、僕の言うことは何でも聞いちゃうんだ!」
 それを聞いたパパリアスの顔が青くなる。
「あはは、じゃあ試しに……僕の部屋からボール持ってきて!」
 それを聞くと、ダッと駆け出し家の中に飛び込んだパパリアス。
 一分もしないうちに、口にボールをくわえて帰ってきた。
「よーしいい子いい子」
 息子が頭を撫でると、パパリアスが尻尾を振った。
「あはは、父さんは完璧に僕の命令聞くようになっちゃった!」
 パパリアスの顔を見ると、目付きが険しくなっていた。
「怖い顔しないでよ、そんな子は閉じ込めちゃうよ!」
 息子がボールを操作すると、パパリアスはあっという間にボールに戻ってしまった。
 抵抗しようとしていたが、それも虚しい反抗であった。
「えへへ、面白いなあこれ」
 持ってきたボールを手で持ったままパパリアス入りのボールをポケットにしまい、息子が笑った。
「あら、父さんはどこに行ったの?」
 そこに、エプロン姿の母親がサンダルを履いて家から出てきた。
「あ、母さん。父さんはちょっと出かけていったよ」
 とっさに嘘をつく息子。
「困った人ね。そろそろご飯なのに」
「じゃあ、僕手を洗ってくるね」
「そうしなさい」
 息子が庭から家に戻ろうとした際、石に躓いてしまう。
「あっ……!」
 手に持っていたボールをうっかり落としてしまう。
 落ちたボールは丁度、セメントで作られた段差のカドにあたった。
 ボールが、スイカのように綺麗に真っ二つになってしまった。
「壊れちゃった!?」
「えー?」
 息子の声に、母親が近寄る。
 その時、割れたボールから光の状態のままの中身が飛び出した。
 偶然にも、それは母親の口の中に飛び込んでしまった。
「な、なに……!?」
 光を飲み込んでしまった母親が驚いていると、体のあちこちが光り始める。
「え……」
 息子が絶句している目の前で、グニグニと体が変わっていく母親。
 右足が縮み、右手が大きくなり、顔が伸び、髪からアンテナのような物が生え……
 その変化は、すぐに終わった。
「へっ?」
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絵:愛鋼熊
 ぽかんとした顔で下を見つつ、自分の顔を左手の片方で触る。
 なんと、母親はエレブーと中途半端に融合してしまったのだ。
 右足の下半分は、エレブーのものになっている。
 そのせいで足が短くなっているため、左足を大きく曲げている状態だ。
 右手は、エレブーと母親のものが一体となりひどく不恰好であった。
 左手は二本あった。
 母親の腕の根元から、エレブーの手も生えているのだ。
 顔も中途半端にエレブーの物と化していた。
 そのせいで口が伸びており、どこか笑っているような顔になっている。
「母……さん?」
「なに、どうなってるの、私?」
 状況がわかってないのか、融合体ママブーは三本の手で体を触っていた。
 息子はその姿に恐怖を覚えるものの、パパリアスの時の事を思い出した。
「母さん、おすわり!」
「えっ?」
 その声が聞こえた途端、バッと犬のようにおすわりするママブー。
「やっぱり! 母さんも、父さんみたいになっちゃったのか!」
「どういう事!? 説明してよ!」
 ママブーが座ったままの姿勢で息子に説明を求める。
「だーめ! 今日から母さんは、僕の命令だけ聞けばいいんだよ」
「そんな……!」
 口では言い返せるものの、体に混ざり込んだエレブー成分のせいで逆らえないようだ。
「じゃあ、今夜はカレーにしてね!」
「えっ……」
「返事は?」
「は、はいっ」
 体が勝手に命令を聞き、どうしようもないママブーであった。

 こうして、不良品ボールのせいで中身とくっついてしまった両親。
 バリバリの戦闘用として育てられていたパパリアスは完全に主戦力モンスターとして扱われるはめに。
 ママブーは、ある意味息子の奴隷になってしまったのであった。
 朝、息子が目覚める。
「おはよう、母さん」
「おはよう、ご飯できてるわよ」
 左右で極端に長さの違う足で何とか歩きつつ、エプロン姿のママブーが食事を並べていた。
「わーい、頂きます」
 息子が朝食を食べ始める。
 メニューはもちろん、息子が指定したもの。
 寝る前に命令されており、ママブーはそれに従って作っているのであった。
「ねえ母さん」
「なあに?」
「今日、友達の家に遊びに行っていい?」
「あら、宿題やったの?」
「ううん、やってない。母さんやっといて」
「ちょっとダメよ! やってから行きなさい」
「なんだよー、口答えするの?」
「口答えってなんですか、あなたの為……」
「エレブー! 自分に10万ボルトだ!」
 母親の言葉を遮るように息子が命令する。
「ちょ……」
 母親の両手が、がしりと自分の頭に生えている角を握った。
 そして、放電。
 ママブーの角から放たれた電撃が、ママブー自身に流れる。
「あへぇぇええぇええぇええ!?」
 電撃により、ママブーの顔が苦痛に歪む。
 が、エレブーの部分の表情は何故か嬉しそうだ。
 自分の発電した電気が自分の中に戻ってくる、それが快感なのだろう。
 しばらく放電した後、ママブーがぐったりする。
「母さん、大丈夫?」
「うん……」
 頬を赤くしながら息子の問いに答える。
「どうしたの?」
「えっと……」
 もじもじして、答えようとしない。
「教えてよ、エレブー」
「さっきの電撃が気持ちよくて、射精しちゃいましたっ」
 母親と融合したエレブーは、♂だったのである。
 その言葉通り、エプロンには何かのシミが付いていた。
「あれっ! 罰のつもりだったのに、そんなに気持ちよかったの?」
「うん、とっても……癖になりそう」
「じゃあね母さん、僕の宿題をちゃんと全部済ませたら、またやらせてあげるよ」
「えっ、でも……」
「わかった、エレブー?」
「うん! がんばる!」
 どうやら「エレブー」と言われると強制的に従ってしまうらしいママブーなのであった。

 朝食を取った後、息子は宿題をママブーに任せ友達の家に。
 今日は、友達とバトルするのであった。
「よう、来たな! 早速勝負しようぜ!」
「おう! でも、僕今日一匹しか持って来てないんだよ」
「えー? エレブーとか持ってないのか?」
「家においてきちゃった」
「ええーっ? 仕方ないな、じゃあタイマンバトルか」
 友達が残念そうに言いつつ、ボールを取り出した。
「よし! じゃあオレはこいつだ! いけ、ボスゴドラ!」
 友達のボールからボスゴドラが飛び出し、勇ましく吠えた。
「よし! いけ、ガブリアス!」
 息子のボールから飛び出したのは、ガブリアス……ではなくパパリアスであった。
「なんだよそれ!?」
 友達が驚く。
 パパリアスも、全裸なのが恥ずかしいのが腕についた大きなヒレで必死に体を隠そうとしていた。
「えー、ガブリアスだよ?」
「嘘言うなよ! なんか眼が人っぽいし髪の毛生えてるし! しかもお腹肌色じゃないか!」
「細かいことは気にするなよ!」
「細かくないって!」
「うるさいな、ガブリアス! じしんだ!」
 命令されたパパリアスが地面に体を密着させ、激しく揺らし始めた。
 ボスゴドラには効果てきめん。
 忽ちにして、ボスゴドラはダウンしてしまうのであった。
「お、おい、ボスゴドラ!?」
「ははは、勝負あったようだな」
「くっそう、卑怯だぞ!」
「卑怯じゃないよー! ちゃんとガブリアスで戦ったし!」
「うるさい!」
 友達が怒って息子に掴みかかろうとするが、その時うっかりボールを踏んでしまう。
 そのボールに吸い込まれていく友達とボスゴドラ。
「あっ、やべっ逃げよっと」
 コロコロ転がるボールを見つつ、パパリアスと一緒に逃げる息子なのであった。

「ふう……逃げた逃げた」
 ふと横を見ると、顔を赤らめてるパパリアス。
 股間を見ると、スリットから逸物が頭を出していた。
「あれ、なんで父さん興奮してるの?」
 ぶんぶん首を振って否定するパパリアス、だが逸物は嘘をつかない。
「あー! さてはじしんした時、気持ちよかったんでしょ」
 パパリアスの顔がますます赤くなる。
「あはは! じゃあ今、好きなだけやっていいよ!」
 そう言われ、息子の目の前でパパリアスがじしんをやり始めた。
 なるほど、じしんを起こす際に下半身を押し付けている。
 そのまま動くわけなので、ある意味床オナをしているような物なのだ。
 あまり激しく揺れないように気をつけつつ、パパリアスは逸物を地面に押し付ける。
「気持ちいい?」
 顔を赤くしながらもゆっくりと頷くパパリアス。
「じゃあ、射精したら帰ろうね」
 息子がそう言い終わるより早く、パパリアスは快感のあまり射精してしまうのであった……

 すっきりしたパパリアスをボールに収め、息子が帰宅した。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
 ママブーが、そんな息子を出迎える。
「宿題終わった?」
「机の上にあるから確認しなさい」
「はーい」
 息子が自分の机の上に置かれたノートを見ると、宿題は完璧にできていた。
 しかも、字を息子のものに似せてあった。
「わあ、すごいな! ありがとう!」
「どういたしまして」
 何かをお願いするような目で、ママブーが息子を見る。
「ああ、そういえばそうだったね! オナニーしていいよ!」
 その言葉に素早く反応し、ママブーの両手が自らの角を持ち放電。
「あへぇぇええぇ……!」
 感電して喘ぎつつ、二本ある左手のうちエレブーの手が、股間を弄り始めるのであった。

 夜、入浴の時間。
 ママブーに命令し、一緒に風呂に入る息子。
「へへへ、一回こうやってエレブーと一緒に風呂に入ってみたかったんだ」
 黒い稲妻マークが走っているママブーのプニプニお腹をつまみながら息子が笑う。
「もう……じゃあ入ればよかったじゃない」
「だって、母さん怒るかもしれないじゃない。でも今母さんがエレブーだから、怒れないしね!」
「あなたって子はっ」
 ママブーが真顔になるものの、エレブーの部分の口はニタニタしている。
「あれー、そう言いながら嬉しそうだけど?」
「あっ、えっ……」
 エレブーの部分はエレブーの気持ちが出るのかな、と思う息子。
 そうして、ママブーの体を洗ってあげたり逆に体を洗ってもらったりする。
「エレブーのお腹、気持ちいいなあ……」
 ぎゅっとママブーに抱きつく、息子なのであった。

 就寝時間。
 布団で、ママブーに抱きついたまま眠りにつく息子。
 どうやら、本当にエレブーが好きらしい。
 そのエレブーと融合してしまったせいで、まるでぬいぐるみのように可愛がられる母親……
 こうしてずっと、息子とそれに従う両親、という奇妙な関係は続くのだった。

 おしまい

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